つい先日、メルカリ社@六本木ヒルズにお邪魔してきました。
今や、東京だけではなく、仙台や福岡、そしてサンフランシスコからロンドンに至るまでグローバルに組織展開をしているメルカリ。
創業期に参画し、現在は社長を務めている小泉文明さんに、従業員数も数十人から1000人以上に至るまでの組織づくりの秘訣をご教授いただきました。
メルカリ@Koizumi さんによるHR勉強会参加してきました。
— 吉兼 周優 / SHUYU(Azit) (@shuyu_y) 2018年8月28日
コーポレート・デザインは極めて重要な経営者マターで、思想レベルから運用レベルまで一貫した骨格が整えられるとポジティブなサイクルに入れて、良い組織が良いプロダクトを創る。
そのためのHOWをたくさん頂いたので、需要あればまとめます。
ツイートした通り、スタートアップの経営者として目から鱗の連続でして、このメモを自分のものだけにしておくのももったいないな、ということで小泉さんご本人からの承諾の上、公開させていただくことになりました。
小泉さん、ありがとうございます!
近いエントリーだと、2ヶ月ほど前に公開されていたツクルバ・村上さんが書いた小泉さんの組織論のディスカッション・メモもすごく参考になるので、ぜひご覧になってみてください。
※一部、重複する部分もございます。
メルカリの組織のどこがすごいか
スタートアップ周辺にいる方々は、空気感でメルカリの組織の強さ、人材のクオリティなどを実感している方も多いかもしれませんが、あまり馴染みにない方に向けてちょっとしたデータを頂きました。
興味のない方は、こちらは飛ばしてしまってください。
リンクアンドモチベーション社が実施しているES(Employee Satisfaction)調査を約600人の従業員を対象に実施し、今年メルカリは「AAA」の評価を頂いているみたいです。
これは日本でもトップクラスとのことで、かなりの割合で従業員が非常に満足して働いていることがわかりますし、従業員数が倍々で増えていく組織が高評価を保つのはすごいことだそうです。
この調査によると、メルカリが強いもの下記の3点とのことでした。
- 理念の発信と伝達(ミッションやバリューが浸透している)
- 事業内容(事業の成長性・将来性・優位性への期待が高い)
- 人的資源(魅力的で多様な人材がたくさんいる)
一方で面白かったのは、メルカリでは上司への期待値がそれほど高くないらしく、上司が何とかしてくれるというよりも自分たちで何とかしようという意識が強いとのことでした。
このあたりも社風が表れているようで組織の分析を行うことでそういったことも見えるのだな、と個人的には極めて興味深かったです。
さて、では導入が長くなってしまいましたが、以下本題のメモです!
自分用の備忘録として議事したものですので、抜け漏れや曖昧な表記があってもご勘弁ください!
コーポレート・デザイン
組織設計を行う上で、大切にしていること
- HRの施策は、ウェブサービスを創るようにアジャイルに運用していく(それこそ、ABテストをしてもいい)
- コーポレートが設計したものは変えれないという認識が一般的だが、失敗して変えていってもいい(改善マインドが大切)
Plan(設計時に大切にしていること)
- ミッションを達成させるためのバリューを中心にすべてを創る
- ビジネスゴールや市場特性とバリューが紐付いていることが大切
- メルカリの場合は、ビジネスゴールが「C2C Market Place」「Global」で市場特性が「Competitive」「Winner takes all」であるため、「Go Bold」「All for One」「Be Professional」にした
- ここが経営陣の過去の経験をした独りよがりになってしまうと、説明が大変になる
- バリューは経営陣の経験ではなく、ミッションや事業特性で決めるべき
- 異なる事業特性の子会社ではバリューは変わることもある
- ビジネスゴールや市場特性とバリューが紐付いていることが大切
- 性善説にたち、シンプルに設計
- ネーミング・パッケージングにこだわる
- 社内外を巻き込んでムーブメント化するために大切
Action(公表時に大切にしていること)
- プレゼンし、メンバーを巻き込む
- メンバーが施策にコミットし発信する
Review(公開時に大切にしていること)
- 発信後の社内外の空気感をチェックする
- 「利用しない、しらけている」「周りがざわつかない」 → ネガティブ
- すぐにチューニングする or やめるの意思決定をする
人事組織
組織名
- People&Culture:人事組織全体
- People Partners:採用、ブランディング、人員計画
- People Experience:人事労務制度、人材管理、給与反映・社会保険
- People Growth & Analytics:育成、アナリティクス
- Culture & Communications:コミュニケーション、オフィス、業務効率化
- Global Operations Team:グローバル・メンバー・サポート、オンボーディング、語学教育
カルチャー構築
バリューを浸透させ、カルチャーを醸成する
- 創業期は経営陣が言い続け、体現し続けるしかない
- 立ち上がってきたら、マネージャーにこの役割を権限委譲する
- 見える化も大事
- 施策:表彰(MVP/Value賞)、ピアボーナス、情報発信(メルカン)、会議室名・ノベルティ・スタンプで接点を増やす等
- ポイント:表彰はインフレさせない
- 候補が何人いても表彰は1-2人だけ
- ストーリーも含めて伝えるのが大切
- ストーリーから議論して意思決定している
- エンジニアとビジネスでバリューは分けない、文化創りは一体となるべき
- エンジニアだけリモートがOKとか文化面における特別扱いはしない
- 経営陣は、社員に迎合しなくていい、ブレないことが大切
性善説の維持へのチャレンジ
- 最小限のルールで経営が現場を信じ、現場で自ら考えて判断する
- ボトムを管理するためのルールはつくらない
- ボトムに合わせないことで、ハイパフォーマーを白けさせない
- 情報はオープンに、会社の情報は人事情報以外すべてオープン
- 情報があれば現場が最適な判断を行うことができる
- 情報格差でマネジメントさせない
- Weekly All Hands(毎週金曜日)でマネジメント・ディスカッションを行う
- 全社員から公開質問を受ける
- 経営陣が何考えているかをオープンにする
- 事業撤退・スタートするときも責任者が前に出て話す
- パネル・ディスカッションなら話す側も周到な準備が必要なくて楽
1on1
- 1週間に1回
- フォーマットは、「話してもらうこと」「話したいこと」を羅列するだけ
- 数値進捗はOKRの進捗確認の場で話す
- マネージャー以上のMTGはOKRの確認から入ることが多い
採用
リファラル
- メルカリの採用は約半数がリファラル
- 最初のリファラルは、経営陣が連れてくるしかない
- リファラルで入ってきた人はリファラルのフローを理解してくれている
- 次のステップは、リファラルで入った人がリファラル採用にコミットしてくれる組織にしていくこと
施策リスト
- 採用会食のサポート(事後でよい、金額は無制限)
- 社内グループプレゼン(All Handsで拡散協力を募る)
- Drink Meetup/勉強会の開催(毎日やっている)
- Github/Linkedinのスカウト(マネージャー以上の採用コミット)
ブランディング
- 採用は、量ではない
- 10人採用したいならば「その10人をどうアトラクトするか」が大事
- 100人にターゲットすればいいってものでもない
- HR主導でブランディングを設計し、ハンドリングする
- 露出方針―常にValueに紐づけたメッセージ
- 経営陣―効果的なタイミングで外部メディア
- メディア露出するタイミング
- ユーザーのトラフィックのニュース(◯◯DL達成!など)
- コーポレートアクションの大きなニュース(◯◯円調達など)
- メルカリの初期の頃は年に4回のPRの山しかつくっていない
- 常に出るわけではなく、一気に出るのが大事
- 一気に出ることで、世間に強く印象として残る
- メディア露出するタイミング
- メンバー―コンテンツをPR/HRで制作、登壇機会の確保
- 経営陣への登壇依頼で受けきれないものは、基本マネージャーに回す
- 新卒採用は、BOLD internshipによる認知拡大が大きかった
- PRやブランディングを相当意識していやっている
- 中途採用にも効いた(狙い通り)
採用のルール
- 採用判断もValue3要素×3項目の9項目で評価
- サラリーの妥当性を評価(結局いくらなの?をわかりやすく)
- 入社後ステップや懸念・リスクも記載
- 入社後面談を通じて面接時からのズレがあれば修正
- エンジニアやプロモなどの一部の職種は課題を提出してもらっている(半年間のプロモ計画をパワポ1枚で、とか)
- All for Oneなので、極力正社員や契約社員以外雇わない
- リモートワークもできる環境だが、基本は出社が前提
- 空気感が一番大事
- 危機意識の醸成も大事
- ただし、マネージャー判断で出社判断できるように権限委譲
- 社内へのクレーム対応も、バリューとの一貫性で伝える
- 採ったあともなあなあにしない
- 全社員、チームに確認がいく
- 試用期間の延長も場合によってはありうる
- 1ヶ月経ったぐらいで、不安だったら延長するべき
- マネージャーは評価時に理想年収(市場価格)と現年収(希望年収)を2種類書くようにしている
- 差分はもちろん生まれる
- 給与は一気に調整は出来ないので、入社後ずっとそれぞれの推移も含めてログに残していく
- エンジニアサラリーは、トレンドに敏感になり変えていく
- エンジニアはサラリーじゃない人も多い
- 給与の交渉はあまりしない
- 仮に1回は飲んでも、2回されたら追わない
- お金に敏感な人は、お金で出ていくので
権限移譲
- 1次面接はずっと自分でやっていた(30分-60分が多い、最近は45分が多い)
- 書類選考も結構自分で見ていた
- 3次面接とか4次面接で自分がないよねとなると途中の工数もかかるし、候補者にも迷惑
- 内定出すまで、早いときには1回で3人ぐらいあってもらって決めてしまうこともある
構造化面接
- 面接ごとにバリュー3種類×3項目でレポートしなければいけない
- 9個の判断軸の質問の仕方は個人にまかせていた(昔は面接者に経験者が多かった)
- 最近は、面接するマネージャーや担当者も若い人が増えたので面接のトレーニングをしたり、フローを変えたりしている
人事評価
評価軸
- OKR
- MBOとの違いは優先度の明確化と飛躍的な成長へのコミット
- 最初の100人ぐらいまで、MBOに近かった
- 網羅性よりもフォーカスを明確にするためのOKRを入れた
- 15人ぐらいのときに評価制度をつくった
- 経営陣も執行が主なので、OKRを持っている
- 経営陣は経営陣同士でQ終わりで1on1とPeer Reviewを行っている
- 各自のOKRの項目はすべてオープン(成果・評価は見れない)にする
- 誰が何にコミットしているのかを明確化する
- 測れるものを1人数個持つ
- マネージャー以上は、採用に貢献できていないと結構つらい
- 人によっては、マネージャーのOKRに採用が入る
- 採用実績のあるメンバーは、チームを作ることが出来るということでマネージャーに上がりやすくなるケースもある
- MBOとの違いは優先度の明確化と飛躍的な成長へのコミット
- Value
- 会社として進め方が評価できるか
- ラッキーで評価されないようにしている
- メンバーから見たときに評価軸に恣意性がなく統一されているか
- 会社として進め方が評価できるか
- Team
- あくまで参考情報
- peer reviewはメンバーが3人を自ら使命し、マネージャーが承認(マネージャーはメンバー全員+3名)
- 「次の四半期にインパクトを残すためにはどうしたらよいですか」などを書いてもらい、アドバイスを多方面からもらえるようにしている
評価のルール
- 評価軸それぞれの評価割合は提示していない
- 経営陣がキャリブレーションをする中で、合意が図っていけるようにしている
- 評価は3ヶ月毎だが、6ヶ月単位で昇給・SO付与などの報酬設計
- 報酬体系として、4段階のグレードを用意
- 3ヶ月だと本質的に見えない部分がある
- ローパフォーマーに関しては3ヶ月経ったときに、指摘した方がいい
- ネガティブなFeedbackもしやすいように
- マネージャーの登用などはあくまで役割なのでいつでもできるようにしている
- メルカリにおいては役割よりもグレードが重たい
- 厳しいFeedbackも評価が適正にあれば、あんまり揉めない
- 給与下げる場合も、アラートが1回か2回出ている
- 実際の意思決定の前にアラートを出しているかどうかを確認する
- 上司との相性で一回異動するなど、環境を変えた方がいい
- 上司とあっていないだけというパターンはよくある
- 実際の意思決定の前にアラートを出しているかどうかを確認する
- 給与下げる場合も、アラートが1回か2回出ている
- ストック・オプションについて
- グレードでベースの株数を決めている
- 資本政策と合わせてバランスを見る
- 上場前はプレーンなSOを使っていた
- 途中USはSOないと採用ができなかった
- 国毎でルールは違う
キャリブレーション
- 評価の納得感をどうつくるかーキャリブレーションが超大切
- 評価のルールを決めるほうが運用が楽
- そのかわり、代償として大きな昇給などがしづらくなる
- 評価のFeedbackで説明責任が問われるので、真剣に向き合うことが重要
- 四半期毎に行っている
- 6-8名程度のマネージャーが集まる
- 1人ずつOKR/Valueとグレードの設定、昇給やSO数(昇給とSOは半期ごと)を確認し、マネージャー間での目線をあわせる
- 5-10分ぐらいの単位で各人をマネージャーがプレゼンし、周りのマネージャーで適正かどうかをディスカッションする
- キャリアノートにメモしていくことでキャリア形成を意識する
- 上長が評価とコメントを書く
- 評価のMTGの議事録含めて全部残していく
- マネージャーで引き継がれていく
- 1回のMTGで50名ほどで判定するので、約半日-1日見ている
- 担当執行役員やHR、グループ間同職種のマネージャーなども同席し、客観性や透明性をもたせる
- その中で相対的に年収レンジが正しいのかをみている
- これをやらないとValueやサラリーの目線が合わない
- アップダウンの激しい人は経営会議でダブルチェックし、フィードバック
- HRシステムを内製しており、評価のツールと人事制度周りだけでエンジニアが10人程度いる
- 2回同じことが起きたらシステム化するの思想
- 5-10分ぐらいの単位で各人をマネージャーがプレゼンし、周りのマネージャーで適正かどうかをディスカッションする
- 250人ぐらいまではすべて経営陣でやっていた
- 200人ぐらいまでは目が届くのでキャリブレーションできる
- 理想年収と提案年収
- 理想年収で全員をソートしている
- 今がフェアだとして、将来の期待値が高い人のみ評価するようにしている
- グレード、理想年収、提案年収のキャリブレーションをそれぞれ行う
グレード
- 4つのグレードは、影響力により判断
- スタッフ:自グループへの影響
- スタッフのリーダークラス:隣のグループへの影響
- ここで役割としてのマネージャーにチャレンジするようになる
- マネージャー:全社への影響
- 執行役員:業界への影響
- 執行役員以上は契約社員のようなプロ契約、他は正社員
- 取締役も任期があるから、それと一緒
- 執行役員以上はSOのベスティングがある、正社員はない
- 管理職手当もない
- 役割としてのマネージャーはクイックになれるし、クイックにやめられる
- 執行役員以上は契約社員のようなプロ契約、他は正社員
- グレードがマネージャーかどうかははリンクしていない
- イケているエンジニア・デザイナー・コーポレートはプレイヤーでも上のグレードまで上がれる
- G職(正社員向け)とは別にA職(主として契約社員向け)のグレードがある
- G職は非定形業務、A職は提携業務という区別
- 最初は職種ごとでグレードの定義をわけていたが、途中でワークしなくなったのでそれはやめて、バリューからくる影響度で図るようにした
人事制度
merci box
※内容はリンク先参照
- ライフイベントにおけるダウンサイドリスクをケア、アップサイドはほぼない
- アップサイドは給与やSOで還元
- ダウンサイドは、確率的にはそんなに起こらないので、実はコストは自体は大したことない
- ただ、ダウンサイドをヘッジすることで、安心して挑戦できるようになり、リファラルも増える
- その分エージェント・フィーが減れば経営上ペイするという考え方
Go Bold に働ける職場環境
- フレックスタイムの導入
- コアタイム:12-16時(MTGは10-19時ならいつでも可)
- PC/キーボード/ディスプレイ/スマフォは好きなものを会社が用意 - 副業・イベント登壇は推奨
- 収入も会社は関与しない
- ただしマネージャー以上は利益相反の可能性があるのでケア - 語学学習、サポート、セミナー、書籍なども支援
- Global Operation Teamによるサポート
- 海外リサーチも負担
- メルペイは全員が中国視察に
ポテンシャル開発
オンボーディングプログラム
- メンター制度 - 最初1週間はメンターが全部ランチを引き合わせる、ランチ代もすべて会社持ち
- どこでも社食というアプリで提携20-30個のレストランはスマフォQRコードで建て替えいらずになった(毎月各レストランから請求書が来るのみ)
- マネージャー育成プログラム
- メルカリのマネージャーとして必要な要素を定義
- サーベイ(リンクアンドモチベーションから社内独自まで)
- 外部サーベイは、リンクアンドモチベーションだけ
- 内部サーベイは、マネージャーの定義をして、それに対してQ&Aをつくっていく
- 一部、GEPPO のような簡単な仕組みは入れている
- ツールよりも、1on1ちゃんとやれていることが大切
効率性とアウトプットの最大化
- マネージャーの直接のレポートラインは8人まで
- 全員と向き合えるように
- MTGは8人以内で1グループから1名選出
- 情報シェアのMTGは実施しない
- MTGは30分以内として議事録はslackでシェア
- 会議の人件費がどれぐらいかかっているかを可視化しようとしている
- メルチップでPeerかつQuickなFeedback
Q&A(その他)
- 制度をつくるための人事コンサルは一回も入れたことがない
- 創業メンバーの上に人を配置する場合の注意点
- まずそういうのが起きる会社だという文化作り、マインドセットが大切
- 自分が上がる可能性もあるし、来る可能性もあるそういう会社
- チャンスをなるべく設けるようにしている
- 取締役と執行役員
- 自分含めてみんな執行に責任を持つ
- 執行役員とマネージャーの役割分担の方が大切
- 現場のルールはマネージャー以下で回る
- 執行役員は、先のことしか考えなくていい―中長期の目線が持てるかどうか
- 1年の中でどうパフォーマンスを出すか
- 幹部候補の集め方
- 小泉さんはメルカリに入って最初にCFOの長澤さんを採用
- 得意なところほど最初に取ることが大事
株式会社Azitでは“日本ならでは”のモビリティの未来を創っていくために、共に挑戦していける仲間を募集しております。
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